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No.12【オンラインショップの営業税に関する問題】

  COVID-19流行に伴い消費者が外出を控え、実店舗ではなくオンラインショップでの買い物が盛んになりました。今では多くの人がオンラインでの物品やサービスの販売を副業とするようにもなりました。これらの販売者が、商品やサービスの魅力や売上高に注力するばかりで、営業税法や所得税法の規定に注意を払っていなかったために、税務当局から指摘を受け追徴や罰金を科されるケースは珍しいことではありません。本稿では、台湾内のオンラインショップについて、税務リスクと訴訟リスクを低減する観点から、順守すべき法令を説明します。

 

1. 税籍登記、営業税納付、統一発票交付の義務
  台湾の現行の「加值型及非加值型營業稅法」(消費税法に相当。以下「営業税法」といいます。)第1条及び第6条には、「台湾内での商品又は役務の販売及び輸入販売についてはすべて、この法律の規定にしたがって、付加価値型又は非付加価値型の営業税を徴収する。」、「次のいずれかの状況にある事業者は、事業者とする。1、営利目的の公営、民営又は官民合同経営の事業。」と規定されています。実店舗に限定する文言はありませんので、オンラインショップも含まれると解されます。

  ただし、税法上、取引に従事するすべての事業者に営業税の支払いが義務付けられている訳ではありません。営業税法第26条の授権規定に基づき台湾財政部(財務省に相当する行政機関)が定めた「小規模事業者営業税基準」(中文:小規模營業人營業稅起徵點)の規定によると、毎月の売上高がNTD8万元以上の事業者のみが税籍登記(税務当局への事業者届出)と納税義務を負っています。

  また、月間売上高がNTD8万元を超え20万元以下の小規模事業者の税率は売上高の1%です。 ただし、月間売上高がNTD20万元を超える場合、又は事業の性質、内容、規模を鑑みて「統一発票」(中文:統一發票。政府所定の書式のインボイス。)を使用する能力があると国税局が認定した事業者については、統一発票を用いて、一般的な営業税の計算方法、つまり売上営業税から仕入営業税を差し引いた方法で税額を計算します。

 

表:オンラインショップ事業者の売上額及び税籍登記、営業税率、申告及び徴収の方法

  売上高(単位:NTD) 税籍登記の要否 営業税額 徴収方法
1 商品販売:80,000元以下
サービス:40,000元以下
不要 非課税 非課税
2 商品販売:80,000元を超え
サービス:40,000元を超え200,000元以下
必要 1% 国税局から、売上に応じた税額の納付書が四半期ごとに発行されます。
3 200,000元を超える 必要 5% 事業者が、二か月ごとに売上営業税から仕入営業税を控除して計算して申告したうえで納付します。

 

2. オンラインショップ事業者における取引関係と税額
  月間売上高がNTD20万元を超える場合、営業税法第15条第1項の「事業者の当期の税額は、売上営業税から仕入れ営業税を控除した残高を、未納又は過払いの税額とする。」というVATの構造の規定が適用されます。なお、過払いの場合は、日本消費税制のように還付請求をできないが、営業税法第39条に基づき、次期以降に繰り越して控除できます。

 

図1:オンラインショップ事業者における取引関係と税額

 

  税籍登記をしているオンラインショップ事業者が、仕入元から購入価格Aで商品を仕入れる時、商品代金に5%の営業税を加算して仕入元に支払います(仕入営業税額「A*5%」)。次に、商品を消費者に販売する時、仕入原価Aプラス転売利益Bに対して5%の営業税を加算した金額を販売価格とします(売上税額「(A+B)*5%」)。そして、売上営業税から仕入営業税を差し引いたB*5%が、オンラインショップ事業者が納付すべき営業税額となります。なお、事業者には、販売先に対し、取引の証憑(この場合は統一発票による領収証)を交付する法的義務があります。

 

3. よくある違法事例
  月間売上高がNTD20万元を超えている事業者について、よくみられる税務上の違法状態の事例を以下に紹介します。

 

(1) 税籍登記をしていない:

 

図2:オンラインショップ事業者が税籍登記せず営業税未納の状態

 

  この場合、国税局から、営業税法第45条に基づき、期限内の税籍登記を命じられ、完了するまで何度でも罰金を科される可能性があります。

  また、統一発票を発行していなかったことについて、租税徴収法(中文:税捐稽徵法)第44条に基づく証憑発行義務違反として国税局が認定した総額の5%の罰金を科されるとともに、売上消費税の過少申告や申告漏れにより営業税法第51条第1項第3号に基づく納税義務違反として、脱税した金額の5倍以下の罰金を科されます。なお、両者とも該当する場合ににおいて、行政罰法第24条及び大法官(最高裁判所より上部機関にあたる公式有識者会議)の決定(大法官釋字第503號解釋)に基づき、より重い方の後者に従い一度のみの処罰がされます。
  なお、売上消費税の過少申告や漏れに対し、仕入消費税の方がそのまま申告されるとしたら、やはり「不自然」なので、脱税者は国税局にばれないように、大体仕入消費税も一部しか申告してない傾向だあります。ただし、脱税額の認定においては、税務当局から売上営業税額の過少申告や申告漏れによる脱税だと指摘された後、脱税者が初めて仕入営業税の控除を主張する場合、関連仕入営業税額が税務当局に認められませんので、(仕入消費税を控除せずに)売上消費税額のままで脱税額とみなされ、多額の損失になるおそれがあります。

  さらに、所得税法第110条に基づく営利所得税(法人税に相当)の申告漏れないし過少申告として処罰される可能性もあります。

 

(2) 第三者による虚偽の統一発票の発行:
前述(1)の状況につき国税局から調査が入ったことを受けて、取引に無関係の第三者をして、消費者へ虚偽の統一発票を交付させてもらうことにより、国税局に対し取引主体をごまかして処罰を免れようとすることもみられます。

 

図3:虚偽の統一発票の交付による脱税処罰回避

 

  しかし、このようなごまかしは、、オンラインショップの競合他社や消費者による統一発票の未発行を検挙したり、又は銀行による異常なキャッシュフローを通報したり、することにより、国税局に発覚されることが殆どなので、実際にはやはりオンライン事業者本人が取引主体であり売上高がNTD20万元を超えていることが容易に発覚されることになります。

  この場合、オンラインショップ業者は相変わらず、税籍登記と追徴納付のほか、脱税額の5倍以下の罰金を科され、また、営業所得税の追徴及び処罰についても同様です。

  オンラインショップ業者の指示に従い、虚偽の統一発票を発行した第三者は、自社が控除する仕入消費税の増額を目論んだ訳ですが、事後に取引証票の真実性が否認された場合、営業税及び営業所得税の脱税額の追徴のみならず、刑法第210条の私文書偽造罪又は刑法第214条の公務員に不実の記載をさせた罪として処罰される可能性があります。
 

(3) 第三者への統一発票の販売:
営業税を申告するつもりのない事業者にとって、自社は仕入消費税の控除の必要性はないため、仕入元から発行された統一発票を有効活用すべく、売上から控除できる費用を水増ししたい第三者に販売することもみられます。やり方としては、オンラインショップ事業者が仕入元に対し、第三者宛の統一発票を発行するよう指示します。

 

図4:第三者への統一発票販売による当該第三者側の費用水増し

 

  統一発票を購入した第三者の行為は、租税徴収法第41条の脱税の罪に該当し、5年以下の懲役、拘留又はNTD6万元以下の罰金を科され又は併科される可能性があります。

  この場合、オンラインショップ事業者は、前述のとおり税籍登記、営業税、営業所得税について罰せられるのみならず、乙の脱税事件においても租税徴収法第43条の脱税幇助罪にあたり、3年以下の懲役、拘留又はNTD6万元以下の罰金を科されまたは併科される可能性があります。
 

4. まとめ
  近年国税局は、オンラインショップ事業者だけでなく、出入金の回数が多い銀行口座やオンラインショップのプラットフォーム事業者に対する調査を行って、特定のオンラインショップアカウントの資料と口座番号の記録の開示を請求することがあり、照会を受けた事業者はこれに応じています。
  自社の取引スキームの適法性に疑義があり国税局の調査が入ることが心配な方は、当事務所の税務担当弁護士又は顧問にご相談ください。

 

周泰維 パートナー弁護士 david.chou@eternity-law.com
廖沿臻 弁護士 yenchen.liao@eternity-law.com
松見日帆子 シニアカウンセル hihoko.matsumi@eternity-law.com

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